電気も運ぶクルマ 災害時のようないざという時に役立つ「給電できる」クルマ
osaki
遠く離れた目的地へ快適に移動できること──これがクルマの第一義であり、さまざまな付加価値を持つモデルが誕生してきた。近頃では、電気も一緒に運び、出先で電気を使える。こうした使い方ができるクルマが増えている。これを得意とするのは、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車など、いわゆる〝電動車〟たち。こうしたクルマの新しい使い方は、停電などいざという時にも有効だ。

ハイブリッド車(HV)/プラグインハイブリッド車(PHV)はエンジンとモーターを持ち、エンジンに大きな負荷がかかる発進や加速時に、モーターの力を借りてエンジンの負担を軽減。これで燃費が向上する仕組み。いつでもモーターがアシストできるよう、専用の畜電池(ニッケル水素やリチウムイオン電池)を積んでいる。この電気を使うことができるのだ。また、エンジンを持たない電気自動車(EV)は、充電した電力を蓄える大きな電池を持っておりその電力を使う。
■1500Wまでの電気製品が使える
HV、PHV、EVとも、おおむねインストルメントパネルあるいはラゲージスペースに、家庭と同じAC100Vのコンセントを持ち、合計1500Wまでの電気製品に電力を供給でき、家庭で使っている電気製品を車内やアウトドアで使うことができるのだ。クルマが車庫にある時でも、家庭で使っている強力な掃除機を持ち込めば、あっとという間に車内の清掃が終わる、という使い方もある。
合計1500Wといってもあまりピンとこないかもしれないが、主な家電製品の消費電力は別表の通り。携帯電話の充電はもとより、電子レンジを使うこともできるのだ。
| 合計1500Wってどのくらい? 消費電力の目安 |
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| テレビ | 100W |
| ノートパソコン | 50W |
| DVDプレーヤー | 80W |
| 携帯電話充電器 | 15W |
| 電気ポット | 1250W |
| トースター | 600W |
| コーヒーメーカー | 400W |
| ホットプレート | 1300W |
| 電子レンジ | 1200W |
| 電気毛布 | 75W |
| 扇風機 | 80W |
| ヘアドライヤー | 1200W |
| ※最大負荷時の電力を表示 ※使用する電化製品の消費電力を必ず確認のこと |
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HVやPHVの場合、蓄電池の電力が底を尽きそうになると、自動的にエンジンが始動して電気を発電。充電が始まる。エンジン用の燃料にゆとりがあれば長時間利用も可能だが、自治体によっては条例等で停車中のアイドリングを禁止している場合もあるので、居住地とともに外出先の条例も確認しておいた方がいいだろう。
■コンセントを持つのはHVが中心
具体的にコンセントを持つモデルをいくつか紹介すると、HVではまずトヨタ・プリウス。Aプレミアム(含むツーリングセレクション)グレードに標準装備されるほか、他のグレードはメーカーオプション設定となっている。同じくトヨタではラージクラスミニバンのアルファード/ヴェルファイアのハイブリッドは、最上級グレードのエクゼクティブラウンジなど三つのグレードに標準装備されており、しかもコンセントは5カ所もある(その他のグレードはメーカーオプションで3カ所)。ガソリンモデルにも標準装備されているグレードがあるが上限が100Wだ。
また、今年2月にラインアップに加わったホンダ・オデッセイのハイブリッド(EXパッケージ)にも標準装備されており、爽快な走りと新たな使い勝手も楽しめる。
PHVでは、SUVの三菱・アウトランダーPHEVのプレミアムパッケージに標準装備される(他のグレードはメーカーオプション)。車内2カ所にあるコンセントのうち、ラゲッジルームは3極コンセントとなっている。


■働くクルマも現場へ電気を〝持参〟
EVでは、ワゴン/バンの二つのタイプを持つ日産・e-NV200のVXグレードを除き全モデルに、100Vコンセントが設定されている。バンという性格上、働くクルマとして〝現場〟に電気を持ち込めるので重宝されている。EVなのでエンジンで発電することはないが、締め切った空間での作業、深夜の住宅街の作業など、活躍できる場は意外と多い。

同じ日産のEV、リーフの場合は専用の給電装置を介して、リーフの蓄電池を家庭の電源の一部に組み込む使い方もある。電気代の安い時間帯にリーフにフル充電。日中の午後など、電力需要ピーク時にリーフに蓄えた電力を使用することで、家庭の電気代の節約を図ろうといものだ。EVによって新たな暮らし方も生まれた。
■充電機能を向上させ、より快適なキャンピングカーも
これまで電気を運べるクルマを紹介してきたが、電気とともに住空間ごと運べるクルマといえばキャンピングカーだ。レジャー利用だけでなく、災害時のシェルターになることでも注目を集めている。
そのキャンピングカーには、ベース車のバッテリーと〝家〟の部分の電気を賄うサブバッテリーが搭載されており、多くはベース車のエンジンにある発電機で、2種類のバッテリーを充電していたが必ずしも十分とはいえなかった。その充電機能を大幅に飛躍させ、より快適な住空間を提供するモデルも出現している。

国内屈指のキャンピングカービルダー、ナッツRVでは高効率の充電システムを自社開発し、クレア5・3エボリューションというモデルに搭載。家庭用エアコンの標準装備を可能とし、酷暑・厳寒期の快適性を向上させた。
一方、九州を代表するビルダー、キャンパー鹿児島では車載用のリチウムイオン蓄電池を搭載するモデルを開発し、さらに、ボディ外板と内装の間に超薄型遮熱材(リフレクティックス)を張り巡らし、車外の熱を遮断する工夫を施したオフィスカーをリリース。こちらも家庭用エアコンの使用が可能だ。
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