日産自動車が三菱自動車との資本提携発表
osaki
日産自動車と三菱自動車は5月12日、幅広い戦略的アライアンスに関する覚書を締結したと発表した。三菱自動車の発行済み株式34%を、日産自動車が2370億円で取得し筆頭株主となった。三菱自動車の燃費データ改ざん問題は自動車業界再編にまで発展した。
両社の戦略的アライアンスは、過去5年間にわたり協力を続けてきた、現行のパートナーシップをさらに発展させるものとしている。
また、両社は購買、車両プラットフォームの共用、新技術の開発分担、生産拠点の共用、および成長市場を含む複数の面で協力することにも合意した。
日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「画期的な合意であり、日産と三菱自動車の双方にウィンウィンとなるもの。両社が集中的に協力し、相当規模のシナジー効果を生み出すことで、新たな自動車産業の勢力ができあがることになる。当社は、三菱自動車の筆頭株主として、三菱のブランドと歴史を尊重し、大きな成長の可能性の実現をサポートしていく。課題に直面している三菱自動車を支援し、同社をアライアンスの新たな一員として歓迎したい」と述べた。
一方の三菱自動車・益子修会長は「長年にわたり、数々のパートナーシップで成果を生み出してきた日産自動車には、アライアンスのメリットを最大限に活かす豊かなノウハウがある。今回の合意で、両社の将来の発展に求められる、長期的な価値を生み出すことができるだろう。開発や共同購買など、リソースの共有を含む戦略的なパートナーシップの深化が、長期的な価値をもたらす」と語った。
この取り決めに従い、日産は新規に発行される5億660万株の三菱自動車株を、1株当たり468円52銭で取得する予定で、取引成立後、日産は三菱自動車の筆頭株主となる。
また、三菱重工業、三菱商事ならびに三菱東京UFJ銀行が、今後も三菱自動車への出資比率を高水準で維持する。
株式の取得は、三菱自動車の株主である三菱グループと株主間契約を結び、規制当局の承認を経て、2016年5月末をめどにアライアンスの正式契約を締結し、2016年末までに全ての手続きが完了する見込みだ。
会見での質疑応答(要旨)は次の通り。
◇ ◇ ◇
──三菱自動車となぜこのタイミングで資本業務提携に踏み切ったのか?
ゴーン社長 5年間にわたるパートナーシップを築いてきた。益子会長とはオープンな対話をしてきた。この問題の規模、対象かもわかった。現在、適正評価手続きを実施しており、その結果を受け株式を売買する。業務提携を考えたのは三菱自動車のトップが冷静に問題を分析し、それを共有していること。経営上の考慮もした。三菱自動車の潜在力を信じており、私たちの支援で早く成長できると思う。その過程で、私どもにもメリットがありウィンウィンの関係になる。
第二に日産自動車にとっては直接的な効果がある。三菱自動車は、東南アジアでの業績が私どもを上回っている。特にSUV、ピックアップトラックではすばらしい仕事をしており、当社が直に享受できるメリットがある。
そして三つ目は、私どもも数年前に困難な状況にあり、三菱従業員の不安は理解できる。サプライヤー、ディーラーも不安もだ。日本企業が手を貸して問題解決を支援することで、不必要な不安やストレスを払拭できる。熟慮した上で、いい投資先だと考えた。
──三菱グループの再支援ではなく日産を選んだ理由は?
益子会長 日産との資本業務提携を考えたのは、2011年に軽自動車の合弁会社を作ってから。一緒に仕事し信頼関係が築けている。ゴーン社長とは、非常にフランクに話ができる。これまで、軽自動車以外の業務提携についても話をしてきた。燃費問題で動きが早まった経緯はあるが、いずれこのような道に進んでいたと考えている。非常に大きく早い自動車産業の環境変化の中で、当社単独で今後の環境対応や自動運転開発に取り組むには信頼できるパートナーが必要。非常に近くに信頼できるパートナーがいた。
──日産との資本提携後も三菱グループから人事面の支援は受け入れるのか。グループ内での立ち位置はどうなるのか?
益子会長 三菱グループから離れるのではなく、今後も20%以上の株を持っていただき人的支援も受ける。私どものメジャーシェアホルダーは日産自動車と三菱グループ3社。そのトップが日産自動車となるということ。
──身内の救済では透明度の高い組織を作れなかった?
益子会長 三菱グループだからできなかったというより、三菱自動車自身が持っている問題だと思う。今後の資本提携によって自動車を良く知っているところで変えることができると思う。特に、技術開発については、人的支援で開発部を大きく変えるきっかけを作れるのではと大きく期待している。
──出資を決めた時期、今日までの経緯は?
ゴーン社長 三菱自動車との関係強化に取り組み、軽自動車以外の領域も検討していた。私たちには好機であり、三菱自動車にとっても好機だ。別に急いだわけではない。三菱自動車には突如危機的状況が発生し、二つの課題に直面した。一つは緊急性の高い問題への対処。もう一つが技術や新車開発を含めた将来的な問題。今回の問題をきっかけに私どもは検討を始め、短期間で合意できた。明らかに今回の問題で早まった感はある。
具体的な内容を検討している。例えば、ピックアップトラックのプラットフォームの共用。各社がプラットフォームの開発には約5億ドルを使うこともなくなる。このほか、両社は電気自動車、自動運転システム開発、コネクティッドカーにも取り組んでおり、それぞれが1回の投資・開発で済むようになる。
また、日産は複数のブランドを常に自主性を持って区別してきた実績がある。三菱自動車は三菱のまま。三菱自動車は自主性を持って、自主的な戦略を行ない、必要な変革で今の問題を克服する。高い成長を目指すことで利益率を上げ、私どものサポートで三菱単独より良い仕事ができると思う。
──株式を取得するには公官庁等から要請があったのか?
益子会長 公的機関からの指示はない。あくまでも日産自動車と私どもで将来の戦略を考えて決断をした。
──燃費不正問題ではNMKVで開発された以上、日産にも責任の一端があり、その責任を取るための提携なのか?
益子会長 昨日も申し上げた通り、これは私どもが開発の責任を負っており日産自動車にも責任があるという認識は持っていない。責任の一端で資本提携に至ったという認識は持っていない。
ゴーン社長 日産自動車と三菱自動車はそのまま。三菱自動車は三菱の商品、市場、戦略の責任を負う。私どもはあくまで株主として支援する。ただ両社の責任範囲は線引きしている。(今回の問題について)三菱の経営陣に説明責任について責任感を持って果たしてもらいたい。
──現在疲弊している三菱自動車のディーラーもサポートしていくのか? あるいは、日産のディーラーに切り替える形になるのか?
益子会長 当然ブランドも別だし販売網も別々なので、三菱自動車のディーラーは私どもが責任を持って面倒を見ていく。日産の販売店に切り替えることも考えていない。できるだけ早く正常な状態に戻し、ディーラー経営が安定するよう全力で取り組みたい。
──今回の提携は具体的にいつから始まったのか、どちら側から持ちかけたのか?
益子会長 2011年、軽自動車の開発継続が困難になった時、私どもには三つの選択肢があった。一つは軽自動車事業からの撤退、二つ目は他社からのOEM供給、三つ目がパートナーと開発。そこで、パートナーと共同で軽自動車を開発・生産することを選択した。この関係がスタートした年が非常に大きなきっかけになったと思う。
その後、他の協業の可能性も検討してきた。一時、私どものタイ工場で日産のピックアップトラックを生産していたこともある。そうした関係の中で、ゴーン社長とは将来的な資本提携も話をしてきており、自然な流れの中で今日を迎えている。ただ燃費問題で早まったということはあるが、今日が突然起きた異常な事態ではない。
──燃費の問題が発覚した段階でこうなる想定はあったのか?
ゴーン社長 それはない。状況把握を待ち、そして徐々に益子会長との話の中で結論に至った。今回の問題発生で加速された感はあるが、これまでも資本提携は検討していた。
──日産の最大市場であり、三菱には小さな市場となる北米では、三菱自動車にどんなメリットがあるのか?
益子会長 協業の具体的な内容はこれから。提携によって商品ラインナップの強化を図ることはできる。北米以外、中国とかロシアなどの市場でもキャパシティの問題などをうまく解決できるだろうと期待しているが、詳細はこれから詰める。
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